メナーデのドイツ映画八十八ケ所巡礼

メナーデとは酒と狂乱の神ディオニュソスを崇める巫女のことです。本ブログではドイツ映画を中心に一人のメナーデ(男ですが)が映画について語ります。独断に満ちていますが、基本冷静です(たまにメナーデらしく狂乱)。まずは88本を目指していきます。最近は止まっていましたが、気が向いたときに書いております。

U-Next31日無料を利用して毎日何を観る? 第11夜 バカナイトニッポン、第12夜 カルトドイツ

U-Next31日無料会員登録で毎晩何を見るか?

前回はわりと真面目に選びました。

 

callmts.hatenablog.com

 

第11夜は視聴可能期間が迫っているものがあったので、急がねばということで、偉大なるバカ映画を。第12夜はドイツのカルト映画を。

 

 

第11夜1本目 『直撃!地獄拳』(石井輝男監督)1974年

86分 バカ5 エロ2 

直撃! 地獄拳 [DVD]

直撃! 地獄拳 [DVD]

  • 発売日: 2016/03/09
  • メディア: DVD
 

 

主演千葉真一のカンフーパロディバカアクション映画。全編安いつくりだが、それをふっとばすほどのイマジネーションの迷いのなさに爆笑。

シリーズ最初ということで、少年漫画みたいな登場人物紹介にたっぷり時間を使っているが、インパクトとバカ度がすごい。アクションはそこそこ。

主人公を演じるのは千葉真一。は甲賀忍者の血を受け継ぐ甲賀竜一。

f:id:callmts:20200302112536j:plain

名前は甲賀竜一、探偵事務所をしている。バカポーズ満載。

元麻薬捜査官の殺し屋は佐藤充

f:id:callmts:20200302113253j:plain

名前は隼猛、登場シーンの顔とセリフのインパクトがすごすぎる。

二人に比べるとややインパクトが弱いが、エロ担当役の郷鍈治(ごうえいじ)

宍戸錠の弟で、妻はちあきなおみというすごい家族関係の人。

f:id:callmts:20200302113436j:plain

名前は桜一郎、合気道道場を追われ、犯罪に手を染める。現在死刑を待つ身。

依頼人役で、映画に花を添えるのは中島ゆたか

f:id:callmts:20200302113849j:plain

画面が華やぐゴージャスさ。声が昔風なのもよい。

マジなシーンとギャグが地続きの素晴らしいつくり。色々なフォロワーがいるのも納得のパワー。ともかく見所満載なので、ぜひご覧あれ。

 

3月5日か6日くらいまで無料視聴可能。

 

 

他にも安岡力也や津川雅彦が敵で出演。真田広之千葉真一の少年期役で出ていたりもする。

 

f:id:callmts:20200302114118j:plain

真田広之は少年時代の甲賀竜一を演じる。修行シーン。師匠は水島道太郎。

  

石井輝男監督はスーパーB映画のキングで特に会社がどうでもいい感じで依頼した映画が面白い。

個人的には『恐怖奇形人間』がベスト。

 

第11夜2本目 『直撃!地獄拳 大逆転』(石井輝男監督)1974年

84分 バカ4 オゲレツ度3 

直撃地獄拳 大逆転 [DVD]

直撃地獄拳 大逆転 [DVD]

  • 発売日: 2016/03/09
  • メディア: DVD
 

相変わらずバカであるが、ちょっとテイストが変わっていてややモダン。キャラわけが進んで隼猛はまともに、桜一郎がよりエロバカになっている。前作にあった登場シーンのような爆弾が今回はないのでインパクトはちょっと弱い。アクションはこちらがかなり上。三人のやりとりはギャグが面白い。音楽かっこいい、展開早い、下ネタ多い。個人的には第1作が好きだが、ファンの間ではこっちの方が評価が高い模様。

 

第12夜 『小人の饗宴』(ヴェルナー・ヘルツォーク監督)1970年

96分 小人暴れ度4 ニワトリ心配になる度3.5 

小人の饗宴 HDリマスター [Blu-ray]

小人の饗宴 HDリマスター [Blu-ray]

  • 発売日: 2016/12/07
  • メディア: Blu-ray
 

 少なくとも日本にはドイツの「バカ映画」はあまり入ってこないので、ちょっと趣向を変えてカルト映画。『アギーレ』や『フィッツカラルド』でのアマゾンロケ作で有名なニュー・ジャーマン・シネマの鬼才ヴェルナー・ヘルツォーク監督の初期作。

 1932年制作のトッド・ブラウニング監督作『フリークス』(奇形者や障害者を集めた見世物小屋映画)と並べて論じられることも多い。

 

話らしい話はあまりなく、小人たちが収容された施設で、指導員の隙をついて起こした暴動、解放された10名弱の小人たちがいたずらと狼藉の限りをつくすシーンが延々と映される。若干危険なシーンもスタントなどは使わず、小人たちが演じた。

f:id:callmts:20200302214416j:plain

小人の中でも大小がけっこう違う。個性も様々。

公開当時は、ドイツでは映画界の自主規制で上映困難に陥り、公開後は様々な批判、抗議が寄せられた。批判・抗議・予想される嫌悪は次のようなもの。

・左翼シンパ批評家の批判:この小人の暴動劇は学生や若者の反乱をおちょくっており、ヘルツォークは「ファシスト」である。

動物愛護団体の抗議(ニワトリの扱いがひどい、ラクダに何かしたのではないか?)。

・白人至上主義者たちによってヘルツォークが殺害リストにいれられる。

カトリック教会は、小人たちの歌や儀式の場面を嫌うだろう(ヘルツォーク予測)。

ヘルツォーク自身は、あまり多くを語ってはいないが、「悪夢も夢も、ポリティカル・コレクトネスの規則には従わない」と発言している。

*1

 

 あまり真意はわからないが、とりあえず挑発的な映画であることは明らか。思想性が強いのかそうでもないのかも微妙。ヘルツォークによると、とりあえず小人症の役者たちの暴れっぷりと笑い声を見て欲しいとのこと。暴れるシーンは確かに生き生きしている。

f:id:callmts:20200302214640j:plain

やりたい放題の小人たちが車を暴走させて遊ぶ。

例えば、同じく「普通ではない人間」を扱った『カスパー・ハウザーの謎』とは違って、あまり安心して観れないが、小さな破壊の享楽は感じられる。一度見ても損はない映画。

 

制作情報など

カナリア諸島に小人症の出演者を集めて制作。役者集めには1年近くかかったが撮影・制作は5週間。特に笑い声などの音声に時間がかかったとのこと。 

 

 同じくヘルツォーク作品について過去記事。

callmts.hatenablog.com

 

*1:Herzog on Herzog. Edited by Paul Cronin. 2002 pp. 55-61