メナーデのドイツ映画八十八ケ所巡礼

メナーデとは酒と狂乱の神ディオニュソスを崇める巫女のことです。本ブログではドイツ映画を中心に一人のメナーデ(男ですが)が映画について語ります。独断に満ちていますが、基本冷静です(たまにメナーデらしく狂乱)。まずは88本を目指していきます。最近は止まっていましたが、気が向いたときに書いております。

U-Next31日無料を利用して毎日何を観る? 第1夜〜第10夜 (半分ドイツ映画しばり) アマゾンプライム情報も

私事で恐縮だが現在怪我の療養中である。毎日が日曜日ではないが、仕事は抑えめ、移動は最小限、時間はたくさんある。色々つらいが、とにかく時間はある。毎日日曜日とまではいかないが、けっこう休みである。

ということでアマゾン・プライムとU-Nextに無料会員登録して色々みている。ラインナップでは高いだけあってU-Nextに軍配。

U-Nextではポイントが必要な映画と見放題映画に分かれている。見放題映画の中から31夜何を見るか考えてみた。

 

方針としては

・本ブログはドイツ映画中心で書いているので少なくとも半分はドイツ映画

・どこのレンタル屋に行ってもありそうなものは除外で個人的趣向に沿って

・見ると映画がもっと好きになる映画を選ぶ

 

まずは第1夜から第10夜まで。それぞれの映画に二項目作って評価してます。

アマゾンプライムとかぶるやつもあるので、それについても記します。

 

 

 

第1夜 『パーマネント・バケーション』(ジム・ジャームッシュ監督)1980年

74分 イカレ度4 ダンスカッコイイ度5 

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まずは、「毎日が日曜日なら」・・・というテーマに沿って「パーマネント・バケーション」。ジム・ジャームッシュの長編初作品。若い男がニューヨークをぶらつく映画。ニューヨークが汚いとりあえず最初のダンスがかっこいいので勢いで最期まで見られる。

 

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レコードに合わせて踊り出す若者。リーゼントと相まってカッコイイ動き。

全体的に意味がよくわからないがブランキー・ジェット・シティーの歌みたいなものだと思うとなんとなく観られる。ロートレアモンのくだりなど時代を感じる。ラウンジ・リザーズのジョン・ルーリーが音楽担当で少々出演。音は終始暗い。

Amazon Primeでも見られた(要レンタル)。

  

第2夜 『コーヒーをめぐる冒険』(ヤン・オーレ・ゲルスター監督)2012年

85分 ユル度4 ほろ苦度4

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ドイツ映画。ジム・ジャームッシュの影響も指摘される監督のデビュー作。モノクロ。街をぶらつくのは似てるが、こちらは現代風でトンガっていない。テンション低めで気楽に観られるのでややダルめのときに。

詳しくは過去記事を御覧ください。

 

callmts.hatenablog.com

 

こちらもAmazon Primeでも見られるが要レンタル。

第3夜 『トリコロール/白の愛』(クシシュトフ・キェシロフスキ監督)1994年  

92分 不能度5 スレ違い度4

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キェシロフスキはポーランド出身の映画監督社会主義時代からドキュメンタリー作品を撮り始め、旧約聖書十戒をモティーフにした『デカローグ』などをポーランドで撮った。おすすめは『ifもしも』的に結末が分かれる『終わりなし』と『デカローグ』だが、フランスで撮った作品の方が普及している。

トリコロール』はフランス国旗の青、白、赤の三色をモティーフにした愛の話でフランス政府から依頼して作った。どれもヒロインが美しい。本作はジュリー・デルピー

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トリコロール/白の愛』よりジュリー・デルピー

『白』は性的不能ポーランド人がフランス人の妻に捨てられるところから始まる話。ポーランドとフランスの描き方からキェシロフスキのしたたかさもうかがえて面白い。

Amazon Primeでも見られるが要レンタル。

 

第4夜 『ソウル・キッチン』(ファティ・アキン監督)2009年

99分 仲間楽しい度5  恋人可愛い度4  

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ファティ・アキンはドイツの監督。トルコ系でドイツ生まれドイツ育ち。2004年の愛より強くヨーロッパ映画賞を受賞するなど評価されて若くして有名になった。ドイツ/トルコをはじめ、様々なボーダーを超えるクロスオーヴァー感が持ち味。シリアスなもの、実験的なものからエンタテイメントまで幅広く器用に撮り分けている。

ソウル・キッチン』はギリシア系の主人公が、仲間とともにボロボロの大衆食堂を軌道にのせていく話色んな人間が仲間になる感じが良い。主人公の恋人役が、前夜の『トリコロール』のジュリー・デルビーに少し似ている。他の女性陣も魅力的。

U-Nextでは2020年3月10くらいまで視聴可能。これはAmazon Primeでも視聴可能。

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第5夜 『マーサの幸せレシピ』(サンドラ・ネッテルベック監督)2001年

106分  料理意外と食べない度4  心の開き方の丁寧な描き方度5

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前夜からの料理つながりで2001年のドイツ映画。パッケージと違って主人公がほんわかしてないのが良い。相手役はイタリア人でドイツとイタリアのステレオタイプを使いながらも、いい感じに主人公が殻から出て人と向き合っていく丁寧な展開がよい良作。ハリウッドリメイクもあるが、もともと多少うまくいきすぎの展開の作りが助長されるとともに、人との向きあいの部分が弱くなっていて凡庸。オリジナル一択。

詳しい考察も書いています。

callmts.hatenablog.com

 

Amazon Primeでも見られるが要レンタル。

第6夜 『浮草』(小津安二郎監督)1959年

118分 感情描写5   若尾文子5  

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  • 発売日: 2012/10/26
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 前夜に引き続き感情描写の丁寧な映画。座長のちょっと無責任なヒョコヒョコ歩きと口喧嘩シーン、若尾文子の「いけん・・・(「ダメ」の意)」のセリフなど見所も満載。小津映画独特の正面から撮る対話場面での若尾文子は鮮烈。

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若尾文子

アマゾンはシネマコレクションKadokawa無料体験で見られる模様。

 

第7夜 『アポロンの地獄』(ピエル・パオロ・パゾリーニ監督)1967年

104分 謎の原風景度5 画面力度5 

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  • 発売日: 2015/08/07
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イタリアの鬼才パゾリーニギリシア悲劇オイディプス王』をリメイク。画面の力はこちらもすごい。個人的には『王女メディア』の方が好きだが、『アポロンの地獄』も名作である。イタリア・ファシズム期の自己体験から急に古代ギリシアまで飛んでいく。エキゾチズムを超えた原風景映像みたいな荒野インパクトがすごい(ギリシアではなくモロッコとのこと)。セリフは少なめで画面で魅せる。王妃になるシルヴァーナ・マンガーノが妙に気になる美しさ

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シルヴァーナ・マンガーノ

あとはパゾリーニ映画ではいつもアンジェロ(=天使、使者)役の二ネット・ダヴォリがこの映画では悲しい知らせを持ってくる。明るいキャラと正反対の役回りで悲しい。

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左:二ネット・ダヴォリ、右:フランコ・チッティ。

第8夜 『ケレル』(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督)1982年

108分 船乗り度5 ハー度5 

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前夜のパゾリーニはゲイだったことでも有名だが、ドイツでゲイの監督といえばファスビンダー。ゲイ映画としては自由の代償が一押しだが、U-Nextであるのは『ケレル』。ジャン・ジュネ原作で、港の男達のハードなゲイ模様が展開する。個人的にはちょっとハードすぎる。

調べたらアマゾンプライムでも見られました。

 

第9夜 『アナザー・カントリー』(マレク・カニエフスカ監督)1984

90分 学園エリート度5 せつなさ5

アナザー・カントリー HDニューマスター版 [DVD]

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  • 発売日: 2010/01/29
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前夜とはうってかわって美しい同性愛もの。イギリス映画。1930年、イギリスのエリート寄宿学校が舞台。上級生が「神」で下級生が常に働く世界。学園もので少年達が美しい。コリン・ファースがいつもレーニンを読んでいるジャド役で映画初出演。エリートたるもの左翼であるべしというジャドがアクセントになっているので、美少年マニアでなくても興味深く観られる作品。

これはアマゾンにはなし。DVDを買うと高いのでU-Nextで見るとお得。2020年10月まで視聴可能。

 

第10夜 『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(トーマス・ヤーン監督) 1997年

89分 見やすい度4 ちょっと泣ける度4

こちらはいわゆる普通の男の友情が結ばれていく映画。ドイツ映画だが、アートでも歴史でもナチスでもなくて、あまりドイツっぽくないヤンチャで男らしい男優しいフニャフニャな男が主人公。同時に余命宣告をされた二人が、死ぬ前に好きなことをしようと旅に出るアクション・コメディ・ロードムービー。深く考えずに観れてけっこう心にも響くよい映画。

 

アマゾンプライムでは現在見られず。

 

まとめ 

なんとなくドイツ映画は普通めになってしまった第1夜から第10夜。『ケレル』以外はどれも見やすいいい映画です。ドイツ映画以外も全部おすすめですが、特に『浮草』『アナザーカントリー』『アポロンの地獄』をおすすめします。

U-Nextならではという点でも『アナザーカントリー』はお試し無料会員で見るとお得な作品です。

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アナザーカントリーより