少女たちの秘密の儀式と人生の選択 イスラエル・フランス映画『秘密の祈り』
2007年、イスラエル・フランス合作。ユダヤ教徒とフェミニズムという興味深いテーマにセクシャル・マイノリティーの問題も混交した青春映画。日本では2011年にアジアクィア映画祭にて上映。日本ではソフト化はされていなくて、なぜかイタリア版がアマゾンに出ています。
日本版のソフト化希望!
公式予告編。
The Secrets - Official Trailer
この映画はネットで流されてたのを英語字幕で見たので細部はけっこう怪しいですが、演技と演出が良くてわかりやすいので大事なことは理解できました。ややうろ覚えですが、忘れないうちに感想など書いておきたいと思います。ネタバレはしないようにしますが、設定やストーリーなどは書いときます。
設定
舞台は現代イスラエル。主人公は父がユダヤ教のラビ(先生で聖職者)をしている少女。学問を尊ぶ家に育っていて、ユダヤ神秘主義の聖地として有名なサフェドの寄宿舎に向かうところからストーリーは始まる。主人公はとても勉強熱心で才能的にはラビになれる素養があるが、ユダヤ教の宗教者になれるのは基本的に男性だけなので、その道は閉ざされている。父は主人公の将来の婿に自分の優秀な弟子を考えていて、娘の自由な人生は考慮していない、というような設定。
少女たちの青春映画の要素
寄宿舎での少女たちの生活がまず楽しい。昔ジュニア文庫か何かで見たような光景。「更生」のために親に入れられた不良、臆病者、いじわる、気のいい子などなどが最初わいわいしているうちにだんだん仲良くなって「冒険」がはじまります。このあたりは普通に楽しい映画ですが、謎の女性とカバラの儀式からやや雲行きが変わります。
謎の女性とカバラ実践
「冒険」は少女が街で見つけた「謎」の女性と関わるものです。過去に殺人をしたという噂があり、独りで住んでいる謎の外国人です。たしか不良少女がフランス語を話すことをきっかけに、この女性が病気と自身の人生についての精神的な苦悩を抱えていることがわかってきます。主人公たちはこの女性のために、ユダヤ神秘主義のカバラが伝える(魂の)救済の秘術を実践することになります。真面目な主人公は、教えが本物なら本当に実践できないはずがないということで、真剣に取り組みます。ちなみに一般にカバラは占いや魔術の一種として理解されていると思いますが、カバラーは「秘密の伝承」の意味で、ラビのユダヤ教が顕教とすると、密教にあたるものです。
主人公の気づきと決断
ここまででの展開も非常に興味深いところなんですが、本作の本当のテーマはこの後明らかになります。ひょんなことから友人と性的な雰囲気になったのをきっかけとして、主人公はある重大な「気づき」を得ます。彼女は自分に敷かれていたそれまでのレールを外れて、自分の人生の道を歩む決断をします。
葛藤の中で彼女が下す決断がどんなものか、最後まで目がはなせない映画で、とても心に残る映画でした。ソフト化もしくは上映してほしい映画です。
2011年に観た方の感想もリンクをはらせてもらいます。