ドイツにサッカーを伝えたコッホと生徒たちの青春映画 『コッホ先生と僕らの革命』 シナリオに難点もあるが良作
2011年ドイツ。原題 „der ganz große Traum“ (『とても大きな夢』)
ゼバスティアン・グロープラー監督、ダニエル・ブリュール主演。
ドイツに初めてサッカー協会を作ったコンラート・コッホをモティーフにしている。
史実とは結構違うようだがそこはご愛嬌。
以下簡単に作品の紹介
あらすじ
時代は1874年、ドイツが統一国家になって3年後のブラウンシュヴァイク(ドイツ中部の都市)。コンラート・コッホはイギリスから母校に英語教師として呼ばれてやってきた。イギリスの友人と一緒にプレイしたサッカーボールを携えて・・・。
ドイツの愛国主義・国家主義に染まった学校の生徒たちは英国への敵対心もあらわに英語を学ぼうとしない。コッホがサッカーを教えながら英語の授業をすすめると次第に生徒は打ち解けていく。だが、他の教師や学校の有力後援者はコッホを危険視し、妨害してくる・・・。
コッホのキャラクター、映画の良い点
コッホは、英国からサッカーとともに「フェア・プレイ」の精神を持ち込む爽やかで情熱的な英語教師として描かれる。演じるのは2003年の『グッバイ・レーニン』以来ドイツ映画はじめヨーロッパ、アメリカでも活躍のダニエル・ブリュール。
最初は英語およびイギリスに敵対的だった生徒たちがサッカーを通じて、コッホと信頼関係を築いていく過程は、オーソドックスだが見ていてとても気持ちいい。
生徒たちは明確な役割が与えられているのは5名ほどだが、色々な個性があって学園ものとしても楽しめる点がよい。
19世紀後半のコスチューム、街並みなども楽しめる。時代考証などは多少甘いところおあるらしいが、それほど問題はなさそうである。資本家や市民階級と労働者階級の差異など時代的背景もイメージできるつくりなので、歴史に興味がある場合その点でも面白い。また多少の笑いも挟まれる。
また音楽もなかなかいい。
史実と違う点、筋書きの特徴
史実と違う点は例えば次の点
・映画では英語教師だが、実際は古典ギリシア語とドイツ語の教師だった。
・サッカーを孤軍奮闘して導入したように描かれているが実際は体操教師が導入し、それに協力した。コッホはサッカー協会設立を主導している。*1
実際には孤立していなかったドイツ語教師コッホを、異端児の英語教師としたのは映画の筋書きとも関係している。
体操教師の授業の場面から映画は始まるが、当時のドイツでは体操は健全に闘う肉体を養うためのものであり、ナショナリズムと親和的だった。これに対してコッホが伝えるサッカーはフェアにプレイを楽しむこと、仲間と協力することを重んじるスポーツとして紹介されている。
「規律」や「服従」、「鍛錬」と「忍従」をよしとするドイツ的教師や有力者は、コッホを排除しようとし、サッカーも敵性文化のように危険視される。
難点
コッホと反コッホ派の対立が、イギリス的なものとドイツ的なものの対立として描かれているのだがこれがやや平板さにつながっている。対立は、リベラルvs軍国主義、フェアプレイvs弱肉強食と置き換えられるのだが、これだと明らかにコッホがいいやつで、敵は単に嫌なやつである。
いいもの悪ものがわかりやすいこと自体は問題ないとしても、映画の中盤が、問題解決→敵の妨害工作→問題解決→妨害工作・・・という展開になっていて、ダレる作りになっているのが映画のクオリティーを結構下げているのは問題である。各役者のキャラだちは敵も味方もよいだけにシナリオの残念さが目立つ。
それでもおすすめ
ともあれ敵味方がはっきりしているので年少観客でも見やすい映画にはなっている。
サッカーに興味があったり、学園ものが好きだったり、前向きなものが好きだったりする人は十分楽しめる映画です。
U-Nextで見られます。
Amazon-Primeだとレンタル。