メナーデのドイツ映画八十八ケ所巡礼

メナーデとは酒と狂乱の神ディオニュソスを崇める巫女のことです。本ブログではドイツ映画を中心に一人のメナーデ(男ですが)が映画について語ります。独断に満ちていますが、基本冷静です(たまにメナーデらしく狂乱)。まずは88本を目指していきます。最近は止まっていましたが、気が向いたときに書いております。

「独裁」の実験 『ザ・ウェイヴ』(ドイツ映画) スリラー好きでない人にむしろオススメ

 2008年ドイツ映画

原題„Die Welle“ (波)

 

THE WAVE ウェイヴ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アットエンタテインメント
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「サード・ウェイヴ実験」をモティーフにしたジュニア小説が原作。「サード・ウェイヴ実験」は、ハイ・スクールの世界史の教師が、「なぜドイツ人がナチズムを受け入れることができたのか」を生徒に行った実験。1971年のスタンフォード囚人実験と並んで、その筋では有名な話である。原作は翻訳あり。

 

ザ・ウェーブ

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  • 作者:モートン ルー
  • 出版社/メーカー: 新樹社
  • 発売日: 2009/09
  • メディア: 単行本
 

 

映画のつくり

心理スリラー映画に仕上がっているが、原作がジュニア向けの小説であることもあってグロいシーン、エグいシーンはない。誰でもみられて、誰がみてもなかなか面白い映画。若い人にとってはかなり衝撃的で若いうちに見た方がいい映画である。

 

原作と違ってドイツの高校が舞台になっている。トルコ系生徒など、ドイツならではの部分が入っているのが面白い。また、世界史の教師ではなく体育教師を主役に据えた点も面白い。教師の演技、妻との関係など大人も目を引く部分を作り出せている。

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体育教師が「独裁」の授業をすることに

 

演技は教師たちも生徒たちもよい。生徒のキャラが多彩なので、誰かには必ず親近感を覚えてみることができる。「独裁」運動「ウェイヴ」に疑問をもつ生徒を、可愛くて優等生だが、わりと自己中な生徒にし、その彼氏がいい奴だけど「空っぽ」という設定にしたのがけっこううまくいっている。

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生徒たち

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「ウェイヴ」に疑問をもちだす生徒

ちなみに映画『素粒子』でも生徒役で出演しているが、そこでも印象的だった。すごいシーンだが。

 

結末

基本的に原作のストーリーと一緒だが、差別構造だったり、嫉妬の感情みたいなものをちょっと強調していて、それがかなり効いている。原作よりもショッキング。

 

グロい、エグいはないので普段、レンタル・ビデオ店のスリラー・コーナーには行かない人にむしろオススメの映画。

 

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スリラーを楽しみたい方は、スタンフォード実験をモティーフにしたエグいやつを。その筋では有名。

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